友人の「やってみない?」から始まった45年
このたび勤続45年を迎えられたそうで。おめでとうございます!

まさかこんなに長く働くとは思わなかったですよ。この間、お店のみなさんに記念としてお祝いしていただき、驚きました。当時一緒に働いていた人たちも来てくださって恐縮です。久々に昔話に花が咲いて、これまでのことを昨日のことのように思い出しました。
ぜひそのお話を聞かせてください。最初はどちらのお店で働き始めたんですか?

最初は『わっぱめしげんじ ステーションビル店』です。いまはもうありませんが、当時は愛知県豊橋駅の駅ビルに入っていたお店です。娘が通っていた小学校のお友だちのお母さんに「従業員を募集してるんだけど、一緒にやってみない?」と誘われたことがきっかけでした。薄い木の板を曲げて作られた「わっぱ」と呼ばれる容器に、だしを効かせた薄味ご飯と具材を乗せてお出ししていました。食べたことありますか?
いえ、ありません!わっぱめし、とても気になります。大崎さんはもともと飲食店に興味があったんですか?

その頃って、外食はとても特別なもので、今ほど気軽に行けるものじゃなかったんですよ。私もほとんど経験がなくて、「飲食店って、いったいどんなところなんだろう」って興味が湧いて。でも、働くこと自体も初めてな私がちゃんとやれるのか、最初はもう不安で不安で。そんな私にいろいろ教えてくれたのが、創業者の小林きみゑさんだったんです。

憧れの背中から感じるあたたかさ
きみゑさんといえば、物語コーポレーションの原点である『酒房源氏』を始めた方ですよね。どんな方なんですか?

テキパキしていてすごく仕事のできる方でね。「これやっておいて」って丸投げするなんて一切しなくて。右も左も分からなかった私に、まず自分がやって見せて、手取り足取り丁寧に教えてくれたんです。一緒に働いていたみなさんも優しくて、不安な気持ちなんてすぐに吹っ飛んじゃいましたね。
とても面倒見がいい方なんですね。

それはもう、本当に良くしてくれました。困っていたらすぐに気付いて飛んできてくれたり、「お子さんはお元気?」「今度、ぜひみんなで私のお家に遊びに来て」って、家族のことまで気遣ってくれたり…。おせっかいで、あったかくて、まさに「お母さん」みたいな人ですね。おかげさまでいつも楽しい職場でした。
きみゑさんから教わったことで、印象に残っていることはありますか?

仕事の心構えでしょうか。「お客様はお金を払って食べに来てくれてるの。だから、自分が食べたくないと思うようなお料理は絶対に出しちゃダメ」とか「きれいに早く丁寧に、自分の大切な人にふるまう気持ちでね」って、いつも言っていました。仕事への姿勢もかっこよくて、今でも私の憧れの存在です。
想いを受け継ぎ、今度は私がおせっかいを
今の『源氏総本店』ではどのくらい働いているんですか?

駅ビルがなくなって、わっぱめしが閉店した1996年からだから…もう30年近くになりますかね。わっぱめしと違って、源氏って大きなお店でしょう。働く従業員の人数も倍以上で、メニューの数も全然違うんですよ。またゼロから覚えるのが大変でした。きみゑさんは源氏にはいらっしゃらなかったんですが、きみゑさんの教えや働く姿勢が自分の中に根付いていて、それが心の支えになっていました。
きみゑさんの姿がずっと胸にあったんですね。

お店の大きさやメニューは変わっても、「自分が食べたくないと思う料理は出さない」「お客様のために、きれいに早く丁寧に」っていう心構えは変わらないと思うんです。それをずっと源氏でもやり続けてきました。あとは、きみゑさんが楽しい職場をつくってくださったように、私もそうしたいと思って。源氏に新しく入ってこられたパートナーには、「お休みの日は何してるの?」「お子様はおいくつ?」って自分から話しかけたりしています。
まわりにおせっかいなところまで、しっかり受け継がれていますね!(笑)

そうかもしれませんね(笑)やっぱり楽しくて、この仕事を続けられていると思うので、みんなにも楽しく働いてほしいと思うんですよね。あったかくて、居心地がいいお店が一番ですよ。

きみゑさんの背中を、今も追いかけて
今後やりたいことはありますか?

これからも、この楽しい職場でできるだけ長く働きたいと思っています。体が資本ですから、健康に気を付けていきたいですね。この前誕生日のお祝いで、家族から電動マッサージ器や寝心地の良い枕をもらったので、大事に使います(笑)きみゑさんはついこの間100歳を迎えられたでしょ。憧れの背中をいつまでも追いかけていけたらと思っています。
最後に、大崎さんの「なりたい自分」とは?

気遣いができて、人を大切にできる人ですね。そのために、新しいことに億劫にならず、「あれ良いな」「これ良いな」って思ったら、自分にどんどん取り入れて、学び続けていきたいと思っています。