全部自分でやることが私の正義
鈴木さんは、現在3人のお子様を育てながらお仕事されていますよね。もともと仕事と家庭の両立を意識されていたんでしょうか?

就職活動のときから意識していましたね。私は、仕事を続けながら結婚もしたいし子どもがほしいと思っていたけど、当時は世間的に「女性はライフイベントのタイミングで仕事を辞めるものだ」って風潮があって、特に飲食業界ではそれが強かったですね。
女性が飲食業界で活躍するのは、なかなか難しい時代だったんですね…。

そんな中、とある会社の就活セミナーで、社長が「自分は子どもができて成長できた。だから女性には、キャリアを理由に子どもを産む選択肢を諦めてほしくない」と言っていたんです。それが物語コーポレーションでした。自分にとっては衝撃的で、「仕事か?結婚・出産か?じゃなくて、両方を求める人生を諦めなくていいんだ」って救われたような気持ちになりました。それで「ここで働きたい!」って思ったんです。
当時の鈴木さんにとって、「両立」はどんなイメージだったんですか?

「全部をちゃんとやること」だと思っていました。仕事も家庭もどっちも手を抜かずに頑張って回していく、みたいな。もともと、やりたいことは自分でどんどん進めたいタイプなんですよね。店長になってすぐのときなんて、張りきりすぎてみんながついてこれなくて、「私たちを置いていかないで」って言われたことがあるくらい(笑)人に任せるのも苦手で。本社の部署に異動になってからも、時間はあるだけ使う!みたいな働き方をしていた時期も正直ありました。
「やりたいこと」と「できること」の狭間
そして物語アカデミーで働いていたときに、第1子の妊娠が発覚したとか。

はい。もちろん、出産したあとは仕事に復帰したいと思っていました。産休に入る前も、まわりから「戻ってきてね」って声をかけてもらえたりして。でも、自分の体がどう変化するかとか、保育園が見つかるかとか、いろんな不安要素がたくさんありましたね。物語コーポレーションにも、まだそういった前例がなく、ロールモデルもいなくて。

鈴木さんにとっても会社にとっても、初めてのことだらけだったんですね。

そうなんです。復帰してからは、フルタイム勤務は難しかったので、会社と相談して初めて時短勤務制度を取り入れてもらって。まわりも手探り状態でしたが、「困ったら何でも言ってね」ってサポートしてくれました。制度やルールを確立している途中だったので、逆に試行錯誤はしやすかったです。でもそれ以上に思うようにいかないこともたくさんあって、「もうやるしかない」って気持ちでした。
その頃、働き方や考え方にどんな変化があったんでしょうか?

限られた時間でやれる方法を考えるようになりましたね。あとは最初から全部自分でやろうとするんじゃなくて、「まずやってみて、足りなければあとから調整する」というふうに、考え方も少しずつ柔軟になっていった気がします。ただ、その一方で、2人目の子どもの妊活を始めたときは、また途中で抜けることになるかもと思って、新しいことに挑戦するのを少しためらうようにもなっていました。自分でやりたい、やらなきゃっていう気持ちはまだ残っていて、途中で投げ出すのは申し訳ないって思ってしまっていたんです。
一人で抱える責任から、分かち合う責任へ
思うように挑戦できないもどかしさがあったからこそ、得たものもきっと大きかったですよね。

そうですね。自分がレベルアップしていくのを実感しました。でも、そんな中、第2子ができて、また自分がやっている業務を引き継ぎすることになって。子どもって授かりものだし、どれだけ自分が頑張っても「途中で手放すこと」は避けられないって気づいたんです。最初は悔しさもありましたが、でも、いざ手放してみたら、ちゃんと仕事は回っていて。「任せないことの方が、よっぽどリスクかもしれない」と思ったんです。
仕事に対する考え方が、根本から変わった印象ですね。

出産・育児に限らず、介護や体調不良とかで、仕事を思うように進められなくなる可能性は誰にだってありますよね。「これは、自分がやりたいことだから、最後まで自分でやらなきゃ」って思う気持ちは、私もそうだったから痛いほどわかります。でも、その責任感の強さに縛られすぎると、かえって本当にやりたいことが実現できなくなることもあるんですよね。だから、誰かに頼ったり、任せたりして、自分がいないときでもやりたいことが進むように仲間と体制づくりをすることが大切だと思うんです。

まわりのみんなを自由で活動的にしたい
そうしてご自身をアップデートしてこられたのですね。鈴木さん、かっこいいです!

いやいや(笑)でも振り返ると、ライフスタイルの変化によって得られたものがたくさんありました。私は、物語の経営目標にある「まわりのみんなを自由で活動的にさせる」って言葉が好きなんですが、それを意識するようになったのは子どもが生まれてからなんです。子どもたちが自分の可能性に蓋をせず、伸び伸びと力を発揮できるようになったらいいなって。それが仕事にもリンクしてきて、一人ひとりが得意なことを活かして楽しく働ける環境づくりがしたいと思うようになりました。
最後に、鈴木さんの「なりたい」自分とは?

相手に寄り添える人になりたいです。そして、その人の「自分物語」を後押しできる存在になりたいですね。もし昔の私のように、なんでも一人で抱え込んでしまう人がいたら、「それでも大丈夫だよ」って伝えられるような存在になりたい。私自身、自分でできないことが悔しかったし、頼ることにずっと戸惑ってきたけれど、思いきって任せてみたら、ちゃんと周りが支えてくれて、思っていた以上に物事は動いてきました。だから、今の私ならそう言えると思うんです。