コミュニケーションの壁にぶつかり自信喪失
カンデルさんはネパール出身ですよね。いつ頃日本に来られたんですか?

ネパールの大学を卒業してからなので、11年前くらいですね。祖父が日本でインドカレー屋を経営していて、「日本は安全・安心で経済的に発展しているから、成長のチャンスがいっぱいあるぞ!」と話してくれたことがあり、興味が湧いたんです。まず留学生として日本に来て、日本語学校と大学を合わせて6年間勉強しました。学費を稼ぐためにアルバイトしていた飲食店で、お客様から「ありがとう」と言われることが嬉しくて、就職活動では飲食の企業ばかりみていました。
そこで物語コーポレーションと出会ったんですね。

そうです。会社説明会で、最短18カ月で店長昇格を目指す育成プログラムがあると聞いて、ここならスピード感をもって成長できそうだと思いました。店舗見学ツアーに参加して、働いている人がみんな明るく元気で、お客様を笑顔にしている姿を見て、自分もこんなふうに働きたいと思い、入社を決めました。すぐに店長になるぞ!とやる気いっぱいだったんですが、実際に入社したら、やっぱりすぐには無理かも・・・と感じてしまったんです。
それはなぜですか?

まず自分の日本語力を過信してしまっていたんですよね。日本語学校や大学でたくさん勉強しましたが、それでもお客様とうまくコミュニケーションがとれなくて注文を間違えてしまったり、マニュアルの内容がわからなくて発注ミスをしてしまったり・・・。当時はまわりに頼ることもうまくできなくて、パートナーとの会話もさらに少なくなっていきました。あるとき、料理提供がちょっと遅れてるなと感じたのに、それをパートナーに言えなくて指示出しをしなかったせいで、お客様にご迷惑をかけたことがあったんです。自分のせいだと思いましたし、仲間に対して思ったことを言えない自分が店長になれるはずがないと自信をなくしてました。

「伝える」ことから逃げない自分へ
それはつらい状況でしたね。

はい。でも、当時の店長との面談で、自分の本当の課題がわかりました。店長から「今のカンデルさんに必要なのは、伝えることへの恐怖に打ち勝つことだよ。パートナーにやってもらいたいことをちゃんと伝えよう」といわれて、ハッとしたんです。それまでは、自分の日本語がもっと上手ければ・・・と思っていましたが、それよりも「相手からどう思われるだろう?」という恐怖のせいで、伝えることから逃げていたんだと気付きました。
そのとき、どんな気持ちでしたか?

ショックでしたね・・・。成長したいと思って日本に来たはずなのに、このままじゃダメだと焦りました。そこで、少しずつ勇気を出してパートナーに指示出しやOJTをしていきました。やっぱり怖い気持ちはあって緊張しましたが、成長のためだと自分に言い聞かせて、「こういう場合は、こっちを優先に動いてね」とか「ここは丁寧に作業してね」と、やってもらいたいことをちゃんと伝えていきました。
勇気をもって一歩踏み出したんですね!まわりの反応はどうでしたか?

それまで何も言わなかった私が、いきなり指示出しをするようになってみんな驚いてましたね(笑)パートナーから「カンデルさん、次はどうしたらいいですか?」と初めて頼ってもらえたときは、飛び上がるほど嬉しかったです!お店のミーティングでもだんだん自信をもって発言できるようになりました。あと、声かけが上手だなと思う人のやり方を真似して、「何か困ってることはない?」って安心してもらえる声かけをしたり、落ち込んでいたら冗談を言って笑わせたりもしましたね。
すごい成長ですね!店長を目指す気持ちに変化はありましたか?

ありましたね。だんだん、自分のお店だったらもっとこうしたいな、と思う回数も増えてきて、店長をやってみたい気持ちが生まれました。そんな私をみて、当時の店長が「今のカンデルさんなら、もう十分店長ができるよ」と背中を押してくれたんです。その言葉が決め手になって、昇格試験に挑戦することを決意しました。
気付いたらあふれていた、仲間への想い
実際に店長になって、いかがでしたか?

正直、「合格です」と言われたときは、まだ不安な気持ちもありました。でも、また恐怖に負けて何もできなかったり、まわりに迷惑をかけたりするのは嫌だったので、まずは着任日に誰よりも明るく元気にお店のみんなにあいさつをしました。そしたら、みんなも笑顔で返してくれて、「絶対に、みんなと一緒に楽しくイキイキ働けるようなお店にするぞ!」と心に決めたんです。その日からは、これまで以上にコミュニケーションに力を入れました。必ず自分からあいさつをして、毎日感謝を伝えることはもちろん、仕事にやりがいを持ってもらえるよう、一人ひとりと面談を行いました。
パートナーが楽しく働けるよう、いろいろ行動したんですね。

はい。特に一人ひとりの目標設定には力を入れました。本人のやりたいことを尊重するのはもちろん、「失敗しても大丈夫。責任は自分がとるから、いろんなチャレンジをしてみて」と伝えて背中を押しました。自分が過去にたくさん失敗した経験があるからこそ、パートナーには自信を失ってほしくないし、挑戦から逃げてほしくなかったんです。そうやって伝え続けるうちに、失敗を恐れずにチャレンジをする人が少しずつ増えて、お店の雰囲気もどんどん明るくなっていきました。着任当初はかなり低かった従業員満足度も、『丸源ラーメン』全店舗の中で第4位にまで上がりましたし、お客様からのお褒めのメールも増えたんです。
素晴らしい成果ですね!

ありがとうございます。入社したばかりのときは、あんなに伝えることが怖かったのに、いつの間にか、パートナーへの想いが溢れるようになっていました。今では「カンデルさんって本当におしゃべりで楽しい人ですね」と言われるほどです(笑)あのとき、自分の成長を諦めていたら、仲間の成長やお客様の笑顔が見られなかったし、こんなに大きなやりがいを感じることもなかったと思います。

仲間とともに成長し、挑戦を楽しめる自分づくりを
今、新たに取り組んでいることはありますか?

お店のインターナショナル(外国籍)パートナーが、リーダーや副店長などの役職取得に挑戦できるようトレーニングを進めています。自分と同じように、日本で成長しようと頑張っている仲間の挑戦を後押ししていきたくて。「言語の壁に負けないで。伝えようとする気持ちが大切なんだ」ということを自分の経験を通して伝えて、彼らの成長をサポートしていけたらと思っています。
最後に、カンデルさんの「なりたい自分」とは?

まわりから頼られて、人を成長させられる存在になりたいです。そのためには、自分自身が成長し続けないといけないと感じます。恐怖を乗り越えた経験があるからこそ、今は挑戦を楽しめるようになりました。「まわりからどう思われるか」を気にして、一歩を踏み出さないままだと、何も始まりません。勇気を出して挑戦するから道を切りひらいていけるんだということを、これからもまわりに伝え続けていきたいですね。