前職での経験を糧に転職という挑戦を
菅さんは、前職でも飲食業をされていたそうですね。
はい。某デリバリーピザチェーン店で店長を経験して、その後スーパーバイザーとして13店舗を担当しました。飲食業界に入ったのはひょんなことからでしたが、実際に働いてみたらすごく面白くてのめり込みました。お店のマネジメントも、最初はできるか不安でしたが、先輩や上司から少しずつ学んで、自分の成長を実感していくのが楽しかったですね。
13店舗のマネジメントは大変そうですね。
意外とそうでもなかったです。お店の「あるべき姿」にむけて、自分が正しいと思うことを行動に移して背中をみせつつ従業員にも落とし込んでいったら、みんな自分についてきてくれました。東北地区を担当していたときは赤字を立て直したことが評価されて、全社で表彰もされました。
素晴らしいですね!では、なぜ物語コーポレーションに転職されたんですか?
もっと大きな会社で自分の力を試してみたかったからです。当時、物語コーポレーションは13期連続で増収増益を達成していて、自分も成長できそうな環境だと感じました。これまでの経験があったので、かなり自信をもって入社したんですが・・・。実際、そううまくはいかなかったんです。
正しいことを伝えているはずなのに・・・
いったい何があったのでしょうか?
自分が正しいと思うことを言い続けたことで、お店での人間関係がうまく築けなかったんです。最初に配属されたお店は、人手不足もあってあまり状態が良くなくて、いろんな場面で「このやり方は間違っているな」と感じていました。だから「今は料理提供を優先しましょう」とか「お客様に対してその対応はダメだと思います」とか、思ったことをその都度伝えたんですが、そのたびによくまわりとぶつかりました。どんなにお店の空気が悪くなっても、自分は正しいことを言っている!と信じていましたね。
間違っていると思うことは見過ごせなかったんですね。
はい。入社2年後に店長に昇格したんですが、それからも自分が正しいと思うことを伝え続けました。そしてあるとき、副店長のパートナー(アルバイト)と営業の優先順位について意見が割れて、大ゲンカをしてしまったんです。何度も話し合ったんですが、お互いに納得できず・・・。気付いたら自分ひとりだけ孤立してしまって、指示を出しても聞いてもらえない状態になってしまいました。
当時の菅さんは、その状況に対してどう感じていたんですか?
とにかく悔しかったです。「店長は私なのに、なんでみんなついてきてくれないんだろう」と本気で悩んで、そこで「自分がパートナーだったらどんなリーダーについていきたいだろうか」と考えてみたんです。そしたら、普段の自分の行動がリーダーとしてふさわしいものではなかったことに気付きました。自分が正しいと思うことを押し付けるばかりで、相手の意見を聞く姿勢や感謝を伝える行動がまったくできていなかったんですよね。これじゃ誰もついてこなくて当然だと自覚しました。
内省を深めることで気付いたんですね。
はい。そこからは一つずつ行動を変えていきました。注意や指摘をするときの伝え方は「こっちが正しいから」ではなく、「なぜそれじゃダメなのか?こうすることでどう良くなるのか?」など説明責任をしっかり果たすことを意識したり、自分が絶対に正しいという考えを捨てました。あと、相手の話を聞くときは口を挟まず最後まで傾聴したり、どんな小さなことでも相手に「ありがとう」を伝えることも大切にしましたね。そうしたら、お店の状況が少しずつ変わっていったんです。
行動を変えたことで見えたチームの可能性
菅さんが行動を変えたことに対して、まわりの反応はどうでしたか?
だんだん会話の量が増えていって、頼られることが増えてきました。「新しいポジションに挑戦したいから教えてほしいです」と言ってくれるパートナーも出てきたんです。敵のような関係だったのが、味方に変わったというか。すごく嬉しかったですし、自分の言動を変えるだけでこんなにもまわりから信頼されるんだと驚きました。いままでの自分が間違っていたなという反省もそのぶん強く感じていたので、償いの気持ちもこめてみんながやりたいことをどんどんサポートして、惜しみなくまわりに協力していきました。意欲が高いパートナーにはどんどん難しい仕事を任せて、挑戦しやすい環境づくりに力を入れ始めたんです。
信頼関係が生まれてきたんですね。嬉しいですね!
はい。あと、そうして権限移譲を進めていったら、店長としての自分の仕事がほぼなくなって、空いた時間で新しい仕組みづくりやお店の未来のために何ができるか?などを考えられるようになったんです。それまでは、自分が最前線で指示出しや指導をして営業につきっきりになっていましたが、パートナーが自立・自走してくれることで、リーダーとして本当にやるべきことに時間を使えるようになりました。
それはすごく大きな変化でしたね!
直感的に「全国のお店がこういう状態になったら、すごいことが起きるかもしれない」とワクワクしました。どうしたらほかの店舗でもパートナーが自立・自走できるかを考えて、ちょうど新しく異動したお店で、仕組み化に挑戦してみたんです。具体的には、日々の営業から管理業務までのすべての作業を細かく洗い出して、それぞれに担当者をつけて目標設定とフィードバックを繰り返していきました。そうしたら、想像どおりパートナーの力でお店の状態がどんどん良くなって、売上だけでなくシフトの充足率やお客様満足度などのいろいろな数値が向上したんです。
それが評価されて上級店長に昇格されたんですね。そのとき、どんな気持ちでしたか?
昇格したことはもちろん嬉しかったですが、それ以上にパートナーたち一人ひとりがイキイキ働いてくれていることの方が嬉しかったですね。充実感を得ながら働いている人って、本当に輝いてみえるんですよ。まわりにも良い影響を与えてくれますし、そんな人財を1人でも多く輩出したいと思っています。
今年の全社表彰では「優秀プレジデント賞」を受賞し、7月からはまた新しいお店に着任されていますね。
はい。このお店は『焼肉きんぐ』の中でも唯一の3フロア構成で、売上もトップクラスです。在籍する従業員数も多くて管理は大変ですが、だからこそ逆に燃えますね!ここでもチームビルディングを進めて、『焼肉きんぐ』の新たな可能性を広げていきたいです。
仲間と大きな成果を生み出す人財を目指して
「自分が絶対正しい」と貫いていたときと比べて、かなり変わった実感があるのではないでしょうか。
そうですね。あのとき自分の行動を振り返って内省をしていなければ、「理解してくれないまわりが悪い」と人のせいにして、いまだにくすぶっていたかもしれません。まわりを無理やり変えようとするのではなく、自分にベクトルをむけて行動を変えることでこそ、道がひらけるんだと実感しました。そのおかげで、こうして仲間の可能性にも気付き、一人ひとりを輝かせることに新たなやりがいを感じることができています。
最後に、菅さんの「なりたい自分」とは?
仲間と一緒に大きな成果を生み出せる人財になりたいですね。自分一人の力ではできることが限られていますし、大きなことを成し遂げるには、やはり仲間の力が必要です。自分だけでなく、自分にかかわるすべての人のポテンシャルを伸ばして、輝かせられるようにしていきたいですね。これからも、どんな状況でも妥協せず、前向きに挑戦していきます!