人員不足の窮地から売上記録を更新
今年の全社表彰で「FC最優秀プレジデント賞」を受賞されましたね。フランチャイズ加盟企業の全店長約250名の中から2名しか選ばれない賞だそうですね。おめでとうございます!
但野祐太
ありがとうございます。まさか自分の名前が呼ばれるなんて思ってもいなかったので、本当に驚きました(笑)でも、特にこの1年間はお客様にご満足いただけるお店づくりができて、売上記録も更新したんです。自分でも成果を出せた実感があったので、素直に嬉しかったですね。
すごいですね!具体的にどんなことをされてきたんですか?
但野祐太
お店の人員をきちんと揃えて、お客様に楽しんでいただける状態をつくることに最も力を入れました。1年ほど前、店長としていまのお店に着任したときは、人員不足で常に忙しく、パートナー(アルバイト)がしんどそうに働いていたんです。これではお客様のことを笑顔にできないと思って、まずは人員不足の対策のために採用と教育に力を入れました。また、接客の質を向上させるために、お客様との接し方や声のかけ方などを1つずつ丁寧にOJTして、自分と同じように接客できる人を増やしていきました。
一つずつ課題をクリアしていかれたんですね。
但野祐太
はい。お客様に満足していただくためには、お店で働く従業員がまず楽しんでいることが何よりも大切だと思うんです。実際に、パートナーの笑顔が増えるにつれて、お客様満足度の数字にも良い変化がありました。「自分もまわりも、いかに楽しんで仕事をするか」にこだわることは、私が前職でジャズピアニストをしていたときに培われた考え方なんです。それが自分のお店で実現できて、とても嬉しかったですね。
「ステージに立つ資格はない」と言われ・・・
なんと!但野さんはジャズピアニストだったんですね。
但野祐太
そうなんです。ピアノは10歳から始めて、14歳のときにピアニストになろうと志しました。実際に16歳でデビューして、それからソロのピアニストとして、イベントや飲食店で演奏するようになったんです。そのまま10年ほどキャリアを積み、ウエスティンホテル東京やザ・ペニンシュラ東京など外資系の5つ星ホテルでアンサンブル(2人以上の奏者が一緒に演奏すること、またはそのグループ)を組んで演奏する仕事も増えていきました。
プロとして活躍されていたんですね。すごいです!
但野祐太
いえ、そのころの私はまだまだ未熟で・・・。やりがいはありましたが、実力主義の世界なので苦しいことも多かったです。実際、ピアノの仕事だけでは生活できなくて、夜勤でコンビニや飲食店のアルバイトをしながらピアノの練習をしていました。毎日時間が足りず、思うように上達しない時期もありました。でも、どこかで「多少スキル不足でもなんとかなる」と思ってしまっていたんです。そんなあるとき、ホテルのレストランでいつものように演奏していたら、共演していたベテランのフルート奏者に「あなたにステージに立つ資格はない」と言われたことがあって。
グサッとくる言葉ですね・・・。そのときどんな気持ちでしたか?
但野祐太
ショックでしたし、本当に悔しかったですね。自分の自信のなさや、それでもどこかで「どうにかなるだろう」と慢心していた態度が演奏に出てしまっていたんだと思います。そこで自分の演奏を改めて振り返って、共演者の音をちゃんと聞いて息を合わせる演奏ができていなかったとか、即興演奏のときにその場の雰囲気に合わせて弾くスキルがまだまだ足りていなかったなど、いろんな反省をしました。そのとき「もう自分の未熟さから目を背けないぞ」と決意したんです。
具体的には、どんなことをされたんですか?
但野祐太
舞台に上がる前の準備にもっと時間をかけるようになりました。演奏を依頼されたときは、事前に曲の楽譜をもらうのですが、それまではリハーサルで1~2回弾いただけで本番に臨むなんてこともありました。けれど、共演者がどんな演奏をするか、お客様の客層はどんな人たちでどんな演奏を好むのか、いろいろなパターンを想定して練習を重ねてから、リハーサルに挑むようにしたんです。そうしたらだんだんと共演者と息を合わせて演奏できるようになり、自分がうまくなってるかもと思えることも増えました。事前準備の大切さを身にしみて感じましたね。
人の大切さを学び、異なる業種へ
行動を変えたことで、より良い演奏ができるようになったんですね。
但野祐太
そうなんです。演奏の質が以前より格段に良くなったことで、「次もぜひ但野さんに依頼しますね」と言ってくださる方が増えたり、ジャズとは違う音楽ジャンルの演奏の依頼が来るようになったりしました。ほかにも、その場限りのアンサンブルではなく、ともに音楽活動をするチームを結成して、音楽フェスなどで演奏する機会もありました。一緒により良い音楽をつくる仲間がいてくれたことで、お互いに助け合ったり、学び合ったりできて、まわりにいる「人」の大切さを実感する機会が増えたんです。ひとりのときより圧倒的に音楽が楽しいと感じるようになりましたね。
素敵な変化があったんですね。
但野祐太
でも、しばらくして新型コロナウイルスが流行して、仕事が激減してしまったんです。ちょうど結婚をしたタイミングでもあったので、苦渋の決断でしたがジャズピアニストを辞めて、会社員として就職することしました。妻の地元で就職先を探していたところ、株式会社しおさいフーズが掲げる「人を大事にする理念」に惹かれて入社しました。飲食店でのアルバイト経験もあったので、不安はなかったですね。
そうだったんですね。『焼肉きんぐ』で働き始めて、実際のところいかがでしたか?
但野祐太
最初は、一緒に働く人がすごくたくさんいて驚きました(笑)もちろん戸惑うことも多かったです。けれど、ピアニスト時代に学んだことや考え方は、業種が違っても変わりませんでした。お客様に楽しんでいただくために、きちんと準備をすることを最優先に取り組んで、シフトの人員が足りなければ、パートナーに声をかけてシフトに入ってもらうようにしたり、新人のトレーニングに力を入れて、お客様をお迎えする状態をきちんとつくることにこだわりましたね。
業種は変わっても、仕事の軸は変わらなかったんですね。
但野祐太
はい。店長としてこのお店に着任してからは、「人を大切にしたい」という想いから、まず従業員満足度にこだわりました。パートナーが楽しく笑顔で働くことが、お客様の満足度につながると思ったんです。お店の取り組みとして、毎月の接客コンテストの開催や、お客様のお誕生日のお祝い演出を独自で企画するなど、幅広く挑戦しました。そうしたら、自分だけでなく、チーム全体でお客様に意識をむけて営業ができる体制が整いました。お客様満足度も目標としていた数値を超えて、お店の売り上げ記録も更新することができて、本当に嬉しかったです。みんなと肩を抱き合って喜びましたね。
自分もまわりも楽しくいられるように
異業種に転職されてから、ピアノは弾いていないんですか?
但野祐太
いえ、実はいまも続けていて、年に2回ライブもしています。仕事としては離れても、やはり音楽がとても好きなので、これからもずっと続けていきたいですね。将来は、もっと若い人が気軽に楽器に触れられるミュージックカフェを開きたいという夢があるんです。いつか実現させるときに、いまの飲食の仕事の経験が活きてくると確信しています。
素敵な夢ですね!最後に、但野さんの「なりたい自分」とは?
但野祐太
自分が良いと思ったことは、迷わず一歩踏み出して行動できる人になりたいです。前職といまの仕事で、人の大切さを心から実感したからこそ、相手のためを想ってすぐに動けるような瞬発力と決断力をもっていたいです。そうして、自分もまわりの人たちも楽しくいられる空気を自らつくっていける存在でありたいですね。