原動力は「早く成長したい」という想い
吉﨑さんは、もともと『焼肉きんぐ』でパートナー(アルバイト)をされていたと聞きました。
吉﨑綾菜
そうなんです。もう10年くらい前ですね。大学生のとき、家の近くでオープニングスタッフの求人を見たのがきっかけでした。軽い気持ちで働き始めましたが、当時の店長がすごく熱心な人で、大学生の私に本気で向き合ってくれることが嬉しくて、どんどんのめり込んでいきましたね。就職活動では人材派遣の会社に内定をもらっていましたが、「この店長みたいになりたい」と思って、物語コーポレーションへの入社を決めました。
そうだったんですね。実際に幹部候補生(1年目の新卒社員)として入社していかがでしたか?
吉﨑綾菜
負けず嫌いなので、「誰よりも早く店長になるぞ!」と意気込んで、入社後の研修でも同期の前で明言しました。当時は3年かけて店長を目指すカリキュラムに沿って昇格していくのが主流で、昇格試験を受けるチャンスは半年に1回しかありませんでした。私は早く成長したいという気持ちが強くて、3年もかけたくなかったので、最速で店長に昇格すると決意したんです。
その目標のために、どんなことをされたんですか?
吉﨑綾菜
まず、当時の店長の真似をしまくりました。店長が営業中にどんな判断をしているのか、部下にどう指導しているのかを観察して、同じことをやってみたんです。ときには失敗もしましたが、自分が成長していくのを感じられてとても楽しかったですね。そうして少しずつリーダーシップを身につけて、昇格試験も順調にリーダー、副店長と合格をして、1年6カ月で念願の店長になれたんです。
すごいですね!18カ月で店長昇格なんて、当時だと異例の昇格スピードですね。
吉﨑綾菜
ありがとうございます。でも、「次にお店を異動するときは店長として着任するんだ」と思うと、自分に本当に店長が務まるのか、正直不安でいっぱいでした。しかも、異動先は関東のお店で・・・。関西出身の私からしたら一体どんなところなのか、どんな人がいるのか想像もつかなくて、急に心細くなりました。そのときはワクワクよりも不安の方が大きかったですね。
初めてぶつかった壁
実際に着任していかがでしたか?
吉﨑綾菜
想像していた以上に店長の仕事が多くてびっくりしました。当時は、いまと違って副店長の段階で店長の業務を学ぶ仕組みがなかったので、シフトの作成も採用や教育の計画を立てるのも初めてで「まず何からやればいいの?」という感じでした。人員不足のお店だったこともあってパートナーに頼るわけにもいかず、ひとりで抱え込んでしまい、残業する日々が続いてつらかったですね。不安が顔に出ていたのか、「こんな若い女性が店長で大丈夫?」と眉をひそめるお客様も少なくなくて・・・。毎日、本当にしんどくてつらかったです。
誰も頼れず、自分ひとりで戦っているような気持ちになっていたんですね。
吉﨑綾菜
そうなんです。「なんでうまくいかないんだろう?」と心が折れてしまって、エリアマネジャーに「辞めたいです」と伝えました。そしたら、すぐに同じエリアのほかのお店からヘルプの人員を集めてシフトをフォローしてもらえて、私の話を聞いてもらったりしました。そこからお店にも自分にも少しずつ余裕がでてきて、「もう一度、店長として仕事に向き合おう」と決意したんです。
まわりの助けがあって、前を向くことができたんですね。
吉﨑綾菜
はい。そこから改善にむけて行動していきました。まわりの先輩店長に素直に「教えてください」とお願いして、わからない業務の解消に取り組んだり、パートナー全員と面談をしてお互いに思っていることを伝え合いました。面談では、多くの人が「このお店で働くことが楽しくない」と感じていることがわかり、みんなが楽しく働けるお店をつくることが私の店長としての使命だ、ということに気付いたんです。そこからは「次の繁忙期にみんなで売上記録の更新をしよう!」と共通の目標をつくったり、そのためにみんなが成長できるようにトレーニングを進めていきました。
その結果、どんな変化があったんですか?
吉﨑綾菜
みんなが少しずつ協力してくれるようになって、「最近、仕事が楽しいです!」と伝えてくれる人も増えていきました。それが心から嬉しかったですし、私自身も徐々に店長業務に慣れてきたこともあって、どんどん仕事が楽しくなっていきました。お客様満足度も上がっていき、売上にもつなげることができたんです。私がお店を異動するときは、常連のお客様が「会いに来たよ!」とお店に来てくださったり、昔働いていたパートナーも見送りに来てくれて、すごく嬉しかったです。着任した当初の不安でいっぱいだった自分からは想像もできないくらい、みんなに囲まれてあたたかい気持ちにあふれましたね。「自分がやってきたことは間違っていなかったんだ。諦めなくて本当に良かった」と思えました。
「ママだからできない」と思われたくなくて
次に配属されたお店で、一度休職されていますね。
吉﨑綾菜
はい。異動して半年後くらいに妊娠が発覚して、バタバタと産休に入りました。無事に第1子を産むことができましたが、さて仕事はどうしようかと、復職のタイミングや役職は結構悩みましたね。もちろん仕事は続けたいけど子育てと両立できるのか、副店長に降職したほうがいいのかとか、いろいろ考えました。でも、店長のやりがいや楽しさが忘れられなくて、「やっぱり私は店長として戻りたい」と決めたんです。夫や両親にも相談したところ「綾菜がやりたいことなんだから応援するよ」と背中を押してもらえて、店長として復職しました。
大きな決断ですね!それまで『焼肉きんぐ』で店長として産休から復職した社員はいなかったですよね?
吉﨑綾菜
そうなんです。前例がなかったので当時の事業部長からはすごく心配されましたが、「吉﨑さんならできるよ。サポートするからね」と応援してもらえて、安心しましたね。同時に、前例がないからこそちゃんとやらなきゃと思って、独身のときと変わらず、フルタイムで8時間、土日も深夜の閉店時間まで働いていました。「ママに店長は務まらないよね」と思われたくないって気持ちが強かったんだと思います。
育児をしながら産休前と同じ働き方なんて、大変ではないですか・・・?
吉﨑綾菜
もう怒涛の日々でしたね。保育園の送り迎えや授乳など家事育児もあったので、家に帰っても休めず、睡眠時間が4時間くらいの毎日が4カ月くらい続きました。当然心身ともに疲れ果ててしまって、前のように発揮していた力が100%出せなくなったんです。少しの余裕もなく、お店の未来のためにやりたい仕組みづくりや人の教育に全然時間を使えていませんでした。
それはしんどい状況ですね・・・。
吉﨑綾菜
このままでは私にとってもお店にとっても良くない結果につながりそうだと思い始めたころ、第2子の妊娠が発覚したんです。それをきっかけに、私がいなくても問題ないお店づくりをしようと決意しました。それまで役職を持ったパートナーが1人もいなかったので、ポテンシャルがある4名に「リーダーになって、一緒にお店をつくってもらいたい」と期待を伝えて、営業中の判断基準や後輩の育成、管理業務などを順番に教えていきました。
そして2回目の産休に入られたんですね。
吉﨑綾菜
はい。産休から復職してからも育成を続けて、4名全員をリーダーに昇格させることができました。彼らの影響で、「自分もリーダーになりたい」と志すパートナーも出てきて、みんなが自立して楽しそうに働いてくれるようになったんです。その様子をみて、「自分のお店をつくることができた」と実感しましたし、ひとりきりで頑張ろうとしていた過去の自分のままだったら、こんなふうに店長の仕事の醍醐味を感じることはできなかったと思います。いまもフルタイムで8時間働いていますが、土曜出勤で日曜休み、平日は基本的にランチ帯からディナー帯の終わりまでのシフトです。睡眠時間は、毎日7時間くらいちゃんと確保できています(笑)
これからも恐れずにチャレンジし続ける
最短での店長昇格に挑戦したり、店長として初の産休復職という前例をつくったり、吉﨑さんから底知れないバイタリティを感じます。
吉﨑綾菜
昔から、自分がやりたいと思ったことを貫く人生でしたが、新しいことや未知なことは何が起こるかわからないことが怖いので、挑戦しないタイプだったんです。でも、店長経験や二度の復職を経て、「何事も恐れずにチャレンジしてみなきゃわからない」と思うようになりました。自分の子どもたちにも、やりたいことにどんどんチャレンジさせていますね。自分の人生は自分で決めるからこそ、成功も失敗も経験して成長するのだと思います。
最後に、吉﨑さんの「なりたい自分」とは?
吉﨑綾菜
自分が起点となって、まわりに良い影響を与えられる人になりたいです。私のお店でアルバイトを経験したことで、仕事って楽しいものなんだと気付いたとか、やりたいことが見つかったとか、そんなふうに誰かの人生にプラスの何かを与えられたら嬉しいです。私だからこそつくることができるお店を目指して、これからもお店のみんなと一緒にいろいろなことにチャレンジしていきたいですね。