正論を押し付けてまわりと衝突していた日々
三宅さんは上級店長として『焼きたてのかるび』で複数店舗の運営にかかわっていると聞きました。
三宅真之
そうですね。1年ほど前に『焼きたてのかるび』に業態異動をして、現在は春日井市と名古屋市にある3店舗の店長を兼務しています。各店舗に直接足を運んで、部下やパートナー(アルバイト)とのミーティングや教育指導のほか、お店の運営状態の確認をするのが主な仕事です。
3店舗それぞれをまとめてチームを築き上げるのは、一筋縄ではいかなさそうですね。
三宅真之
チームビルディングで重要なのは人間関係の構築だと思っています。そのためには理念体現が最も重要だと考えていて、特に私は「個対個」で人と接することを心がけていますね。でも、最初から完璧にできていたわけではありませんでした。昔の私は自己主張がかなり強く、相手の意見は一切聞かずに正論で押さえ込むようなやり方をしていたこともあったんです。
そうだったんですね!なぜそこまで強い姿勢になっていたのでしょうか。
三宅真之
「正しい運営」へのこだわりが強すぎて、マニュアルやルールに従うことが唯一の正義だと信じていたからです。人間関係を築く前から「やり方が間違ってるからこれはダメ」とか「マニュアルのとおりにすぐ修正して」と有無を言わさず押し付けていました。そのせいでまわりとはよくぶつかっていましたが、間違っている方が悪いと思い込んでいて、自分の言い方やタイミングが相手にどう影響するかを考えるのは二の次でした。店長に昇格してからも「自分のお店だからこそ、正しく運営したい」という想いが強くなり、さらに拍車がかかっていきました。
店長としてのあるべき姿を見つめ直して
ルールを守ることは大切ですが、それを押し付けるだけだと、人間関係がうまくいかなくなりますよね・・・。
三宅真之
そうなんです。まさにそれを実感した出来事がありました。あるとき、パートナーが「店長の言い方がキツくてつらい」「全然こっちを見て話をしてくれないのが嫌だ」と、私の部下に泣きながら訴えている場面を見てしまったんです。すごくショックでした。それまで、自分はお店を良くするために店長として正しいことをやっているという自負がありましたが、実際にはパートナーを傷つけて、信頼関係を壊していたんです。
自分の言葉で相手が悲しい思いをしていることに気付いたんですね。
三宅真之
はい。そこから、自分の言動を見つめ直しました。思い切って、まわりのパートナーに自分のことをどう思うか聞いたりしながら、「どんな店長だったらみんなが付いていきたいか?」を考えました。そして、自分の意見を押し付けたり、ルールを盾に論破したりするのではなく、みんなが納得感をもって動けるように導くのが店長のあるべき姿なんだと見えてきたんです。でも、ちょうどそのタイミングでお店を異動することになって。
次のお店では、あるべき姿を目指すために何に取り組んでいったのですか?
三宅真之
パートナーと信頼関係を築くことを最優先に考え、行動していきました。まず、パートナーの話にちゃんと耳を傾けて、それぞれがいま困っていることや解消したい不安などを聞き出し、その解決のために行動したんです。もちろんこちらから「これをやってほしい」とお願いすることもありましたが、その意図や目的をちゃんと言葉で語り、説明責任を果たしていきました。そしたら、みんなが「店長がそう言うなら、ぜひやりましょう」と協力してくれたんです。正論を押し通すのではなく、まず何よりも先に相手に寄り添うこと、それから相手に伝わるように自分の意思や想いを表現することが、信頼関係づくりにはとても重要なんだと実感しました。
理念体現によってチームづくりを加速
それは素晴らしい変化ですね!
三宅真之
はい。それと、ちゃんと話し合えば、自分と異なる意見をもっている人も根本的には「お店をもっと良くしたい」と考えていて、自分なりの正義に基づいた行動をしていることに気付きました。そこで、みんなで議論する時間を増やしたり、一人ひとりとの面談を重ねて、それぞれがどうしたいのかを個対個で引き出していきました。その中で、たとえば新人のトレーニングや発注業務などに挑戦したいと伝えてくれた人には仕事を任せたり、権限移譲を進めていきました。すると、責任感をもって仕事に取り組んでくれるパートナーが増え、お店の改善もどんどん進んでいったんです。その結果、お店の売上もどんどん上がり、最終的に赤字を黒字にすることができました。
一人ひとりの想いに向き合って任せることが成果につながったんですね。
三宅真之
そうですね。それからしばらくして、『焼きたてのかるび』への異動が決まり、新たな挑戦の場で自分の理念体現が試されることになりました。初めての業態異動で、それまで丸源で培ってきたオペレーションスキルも知識もすべてゼロからのスタートとなったので、最初は正直ふりだしに戻ったような気持ちでした。でも同時に、これはチャンスだとも思い、この状況で焼きたてのみんなから信頼してもらうには、自分の人間性をどう表現すればいいだろう、と考えながら行動していきました。
自分のスキルが通用しない中、純粋に生き方や姿勢で仲間を動かせるかが問われたんですね。
三宅真之
はい。常に謙虚に学ぶ姿勢をもち、パートナーの経験やスキルにきちんと敬意を払うことを徹底しました。教えてもらう立場として素直に感謝を伝えたり、相手の強みを心から褒めて承認したり。以前の私だったら、店長としてのプライドが邪魔をして素直になれなかったと思います。でも、わたしのその行動でみんながすごく喜んでやる気になってくれたんです。オペレーションが未熟でも店長として慕ってくれて、私が「高いスタンダードのお店をつくりたい」と伝えたときも「それならこういうやり方はどうですか?」と自主的に提案が生まれました。その結果、お客様満足度もどんどん上がり、事業部内でトップクラスに満足度の高いお店をつくることができました。
柔軟に、前向きに、かっこよく
自分の正論を押し付けるリーダーシップから、大きく変化しましたね。
三宅真之
はい。自分の正義を押し通して、独りよがりなお店づくりをしているままだったら、こんなふうにパートナーのみんなと一緒にお店をつくり上げていく経験はできなかったかもしれません。こうしたチームづくりを評価いただいて、今年から3店舗の兼任店長を任されたのかなと思います。これからも、みんなが活躍できるようなお店づくりをしていきたいですね。
最後に、三宅さんの「なりたい自分」とは?
三宅真之
誰かの憧れになるような、かっこいい「物語人」になりたいです。利他的で品格があって、常に前向きに行動ができる人はかっこいいと思います。自分がそうなるために、人を否定せず、いろんな考え方や意見を受け入れて、相手を理解したうえで何がベストなのかを考え尽くした行動をしていきたいですね。