ダブルワークで始まった、家族のための新たな挑戦
川野さんはパートナー(アルバイト)として、2020年3月から『焼肉きんぐ』で働き始めたそうですね。
川野裕樹
そうです。本職は家業の造園業なのですが、当時流行し始めた新型コロナウイルスの影響でダブルワーク先を探していて、家の近くにあった『焼肉きんぐ 川崎高津店』で働き始めました。子どもが4人いるので、子どもたちの教育費を稼ぎたいという想いから、ディナー帯のみのシフトで本職と両立させていました。
川野さんといえば、「おせっかい」のプロフェッショナルとして有名ですよね。お客様満足度を競うコンテスト「物語甲子園」で、川崎高津店を優勝に導いた立役者と聞いています。
川野裕樹
いやいや、恐縮です(笑)自分にとっておせっかいとは、お客様に寄り添い、期待を超える感動を届けることだと思っています。お客様の表情や視線から「何を求めていらっしゃるか」を察して、その一歩先のアクションを自ら起こすようにしています。でも、最初から「おせっかいをしたい!」と思っていたわけではなかったんです。
そうだったんですね。何がきっかけでおせっかいに目覚めたんですか?
川野裕樹
当時の店長から「お客様満足度をもっと向上させたいから、川野さんにその責任者を任せたい」と打診されたことがきっかけでした。自分は新しいこととかチャレンジを楽しめるタイプなので、「なんだかおもしろそうだな」とワクワクしましたね。お客様にもっと喜んでもらうために何ができるのかを考えて、まず接客を強化しよう!と決めたんです。
レジェンドとの出会いで生まれた決意
接客の強化にむけて、どんなことに取り組みましたか?
川野裕樹
基本的なことですが、お辞儀はしっかり丁寧にすること、お客様とお話しするときは目を合わせること、一方的にならないようにゆっくりわかりやすいコミュニケーションをとること、お客様の顔を覚えることなどですね。あとは「仕事」という雰囲気や空気を出しすぎないように意識しました。こちらが自然体でいることで、お客様のリラックスを引き出すことができると思うんです。実際に、これらの行動でお客様満足度の数字も変化しましたし、何より自分自身が働くことがすごく楽しくなったんです。
たしかに、川野さんのその素敵な笑顔を見ていると、こちらまで笑顔になりますね。「おせっかいマスター」になられたのも、この頃でしょうか?
川野裕樹
そうですね。おせっかいマスターの教育・輩出担当の高橋さんと出会ったことがきっかけでした。当時、高橋さんが全国の店舗を回って接客の指導をされていて、川崎高津店にも来てくださったんです。そのときに自分の接客をみて「川野さんは絶対におせっかいマスターになるべきだ!」と太鼓判を押してくれて。特例で翌日におせっかいマスターの実技試験を受け、合格しました。
それはさすがですね!高橋さんに認められるのは、並大抵のことではないはずです。
川野裕樹
自分はこのとき初めて高橋さんの接客を目の前でみて、感動しましたね。お客様のちょっとした変化にすぐ気付いて、行動されるんです。例えば、小さなお子様が寝てしまったのをみかけたらブランケットをお持ちしたり、お客様のテーブルにならんだ商品をみて「この商品をこちらに合わせると、さらに美味しく召し上がれますよ」と提案したり。実際にお肉を焼いて差し上げたりもしていましたね。こんなところまで踏み込んでいいんだ!と衝撃を受けました。高橋さんと同じレベルの接客はできないかもしれないけど、負けないくらいの熱量で目の前のお客様に向き合って、自分なりのおせっかいを全力でしたい!と思いました。
個の情熱を、お店全体の文化へ
そこから、おせっかいのプロフェッショナルとしてさらに活躍されたんですね。逆に、課題や壁にぶつかったことはありましたか?
川野裕樹
ありましたね。自分がシフトに入っていない日に、お客様満足度の数字が下がってしまうんです。お客様アンケートに「今日はあの人がいなくて残念」と書かれてしまったり・・・。すごく悔しかったです。自分以外のパートナーたちもみんな頑張っているのに、お客様に伝わっていないことがすごくもったいなくて。そこから、自分だけの力ではなく、お店の全員でお客様に喜んでもらえる「おせっかい文化」をつくろうと決めました。
具体的に、どのようにしてお店全体を巻き込んでいったのですか?
川野裕樹
まず、自分の想いをみんなに伝えました。おせっかいの楽しさや、まわりへの感謝の気持ち、これからお店をどうしていきたいかなどを発信したんです。あとはなにより、自分が誰よりも楽しそうに接客をして、模範演技を見せ続けることを大切にしました。キッチン担当にもこれらを伝えていった結果、商品をつくるキッチンの作業スピードが上がり、ホールのメンバーも「あちらのお客様にこれを提案してもいいですか」と、どんどんお客様のために自分から行動するようになったんです。「私もおせっかいマスターになりたいです」と申し出てくれたメンバーも出てきました。
その文化の定着が「物語甲子園」での大きな成果につながったんですね。
川野裕樹
はい。「物語甲子園」の第3回の開催が決まったとき、今の川崎高津店なら絶対に優勝できる!という確信がありました。甲子園の期間中は、お客様に寄り添う時間と回数をさらに意識的に増やしました。もちろんお客様と向き合ったのは自分だけではなく、10名のおせっかいマスターたちと一緒に、です。
10名もおせっかいマスターを輩出されたのですか!?一体どうやって・・・?
川野裕樹
後輩を育成するときは、自分の考えややり方を押し付けないことを意識しています。それぞれ一人ひとりに向き不向きがあるので、その人の強みや良いところを伸ばしていくことを大切にしています。あと、最近はエリア内の他店舗の従業員育成も担当しています。川崎高津店で研修を実施し、おせっかいマスターになるための指導をするんです。研修では、おせっかいのやり方そのものを教えるというよりも、「接客ってこんなに楽しいんだ!」というワクワクした気持ちを実感してもらうことを意識していますね。参加者が自分の店舗に帰っても、楽しくイキイキと働いてほしいと思っています。
世界一かっこいい父親を目指して
川崎高津店だけでなく、エリア全体のおせっかいの質を高める活動までされているのですね。川野さんのその情熱が、多くの仲間たちの力になっているのだと感じます。
川野裕樹
ありがとうございます。自分だけではなく、仲間が主役になって楽しめる環境を作ることが、お客様の笑顔に繋がるのだと確信しています。今の自分にとって、そうして育った仲間たちがお店やエリアでイキイキと活躍してくれる姿を見ることが、何よりのやりがいです。この「誰かの成長を支えたい」という想いの根底には、父親としての視点もあるのかもしれません。
父親としての視点、ですか?
川野裕樹
はい。自分の子どもたちが何かに挑戦しようとするとき、全力で応援したいし、そのための環境を整えてあげたいと思っています。その想いは、お店で後輩たちに向き合うときも同じです。いまの自分の働き方としては、月曜から土曜まで日中は本職の造園業をこなし、週4日は17時から閉店まで焼肉きんぐで店舗に立つという生活を送っています。体力的にハードな時もありますが、子供たちに「うちのお父さんは楽しみながら働いているんだな」という背中を見せたいんです。その一心で日々走り回っています。
最後に、川野さんの「なりたい自分」とは?
川野裕樹
世界一かっこいい父親であり続けたいです。子供たちにとって、自慢の父親でありたい。そのためにも、どんな状況でもおせっかいを全力で楽しみ、その楽しさを周りに伝播させられる人でありたいです。家族の幸せのため、そして自分自身のさらなる成長のために、これからも「おせっかい精神」を胸に全力で走り続けたいと思います!