規律の世界から「自由」を求めて
安藤さんは今年の1月から『丸源ラーメン』のエリアマネジャーとして活躍されていますが、もともと物語コーポレーションに入社を決めた理由はなんだったのでしょうか?
安藤康佑
自分の性格と真逆の社風と理念に惹かれたからです。僕は幼少期から野球をやっていて、ミスをすれば「お前のせいで負けた」と怒られるのが当たり前の世界で育ちました。とにかく失敗をしないよう、人に言われたことを間違えずにやることに全力を注いでいたんです。でも、心のどこかでそんな自分を変えたいという想いもあって。就職活動で「一人ひとりが自分らしく、自分の人生を生きよう」と掲げる物語コーポレーションに出会ったとき、これまでの自分を卒業できるかもしれない!と思って入社を決めました。
実際に入社してみて、すぐに「自分らしさ」は出せましたか?
安藤康佑
いえ、全くです。理念に憧れて入ったはずなのに、実際は自分の意見を言ったり主張することが全然できなくて・・・。店長が示す方針を忠実に守って行動することは得意だったので、まわりからは「仕事ができる」と思われていたかもしれませんが、そこに僕の意思は何ひとつありませんでした。
いまの安藤さんからは想像もつかないですが・・・。どのくらいの期間、そうして働いていたんですか?
安藤康佑
5年くらいですね。その間に店長にも昇格しましたが、自分の意思で決めるのが怖くて、事業部長やエリアマネジャーの言うことをそのまま聞き、ゼロから何かを生み出す挑戦からは逃げていました。まわりの同期が新しいことに挑んでキラキラしている姿を見て、焦りと劣等感を感じる日々でした。
マニュアルを超えた先にあった、自分で決める怖さと楽しさ
そんな安藤さんが、変わったきっかけは何だったのでしょうか?
安藤康佑
新店の立ち上げを任されたことです。既存店にはこれまでのやり方やルールが必ずありますが、新店にはそれがなく、オープニングスタッフとして集まったパートナー(アルバイト)は全員が新人です。パートナーから「なぜこのルールなんですか?」「こうしたほうがいいと思いませんか?」という質問が毎日続いて、これまでの僕の「ルールどおりにすればいい」というスタンスが通用しなくなりました。目の前の課題に対して、僕が自分の責任で「こうしよう」「このルールでいこう」と意思決定を繰り返さなければならなかったんです。
一人で決断し続けるのは、プレッシャーと孤独を感じますよね。
安藤康佑
そんなあるとき、公式アプリのダウンロードをお客様におすすめするタイミングを変えようと提案してくれたパートナーがいたんです。正直その提案を聞いたときは「案内が長引いてクレームになったらどうしよう」とか「マニュアルと違うことをやって怒られるんじゃないか」と不安になりました。でも、少しずつ自分が意思決定することにも慣れてきていたので、「試しにやってみよう」と提案を受け入れたんです。
その結果はどうなったんですか?
安藤康佑
そうしたら、アプリのダウンロード数が爆発的に伸びて、全国の店舗で1番の結果が出たんです。お客様からも「便利なアプリだね」とお褒めの言葉をいただいて、喜んでもらえたことがすごく嬉しくて。やってよかったと自信になりました。このあたりから、前例がない新しいことに挑戦する楽しさや価値みたいなものが、だんだん自分の中で生まれてきました。
売上レコード更新の裏で起きた悲劇
その後、安藤さんは『丸源ラーメン』の北海道1号店の店長を務められたんですよね。未知のエリアへの進出ですが、どのような想いで着任されたのでしょうか?
安藤康佑
それはもうすごいプレッシャーでした(笑)北海道は、ラーメンが人気な地域で競合も多いですし、丸源ラーメンが戦っていけるのか不安で・・・。だからこそ、失敗を恐れる自分からの卒業試験のような気持ちで挑戦したんです。これまでの経験で成長してきたいまの自分なら出来るかもしれない!と自分を奮い立たせて着任しましたね。
実際の手ごたえはいかがでしたか?
安藤康佑
オープン初月で、丸源ラーメンの直営店の月間売上レコードを更新しました!この売上が10年ぶりの記録更新で、すごく嬉しかったですね。とにかく活気のある感じのいいお店にこだわって、丸源ラーメンにしかだせない「とびっきりの笑顔と心からの元気」を全員で体現しました。パートナーからの提案もほぼ全て受け入れて、自分の店をつくれている実感も持てていました。でも、その成果の裏では、僕はリーダーとしてふさわしくない行動をとってしまっていたんです。
リーダーとしてふさわしくない行動とは、何があったんでしょうか?
安藤康佑
パートナーには寄り添っていたのに、部下である社員に対しては完璧を求めてしまい、厳しさだけのマネジメントをしてしまいました。昔の僕の「失敗してはいけない」という恐怖心が再燃して、部下にそれをむけてしまったんです。これまでの成功経験で自信がついたぶん、「自分のやり方は間違ってない」とゆがんだ認識をしていたことも要因のひとつだったと思います。「なんでこんな簡単なことができないのか」と少しのミスも逃さず問い詰めて、社員たちがどんどん退職や異動を選んでいきました。売上は日本一でしたが、部下がついてこない店長、社員が育たないお店になっていました。
成果は出せても、仲間たちの心が離れていってしまったんですね・・・。
安藤康佑
この経験から、どんなに数字を出しても人を大事にしなければ意味がないということに気付きました。その後、丸源ラーメンの1号店である三河安城店に異動が決まったので「今度こそ同じ失敗はしないぞ!」という気持ちで着任したんです。部下社員に対して必要な要求はもちろんしますが、必ず個対個で相手の話を聞いて寄り添うことを徹底していきました。注意や指摘をするときも、良いところを一緒に伝えて褒めるようにして、「安藤さんが言うならやってみよう」と思ってもらえる関係性をつくることを意識しました。それを貫いた結果、部下社員が困ったときにすぐ相談しにきてくれたり、昇格する人も出てきたんです。
人としての本当の「かっこよさ」とは
その痛い失敗があったからこそ、今のエリアマネジャーとしての安藤さんがあるのですね。
安藤康佑
本当にそう思います。いまはエリアマネジャーとして、自分のエリアの店長が「やりたい」ということを最優先にしています。責任は僕が負うから、どれだけ失敗してもいいよと伝えていますね。もしうまくいかなくても「次はどうするか」を一緒に考えればいいだけです。力でねじ伏せるのではなく、納得感を持って動いてもらえる環境をつくることがいまの僕の責務です。
そんな安藤さんの「なりたい自分」とは?
安藤康佑
まわりから「この人と一緒に仕事がしたい」と思われるかっこいい人です。それは結果が出せる人ということだけではなく、挨拶や返事など人として当たり前の礼節を徹底し、誠実に向き合う人のことです。僕は、失敗が怖くて動けない弱さも、力で人を抑えつけようとした愚かさも経験しています。だからこそ、同じように悩んでいる人たちの気持ちが誰よりも理解できるんです。いつか事業部を牽引し、社長を目指すという大きな夢にむかって、これからも自分物語を歩み続けます。