なぜ「物語レシピ」で理念を語るのか

編集部:「物語レシピ」は2012年から毎年発行され、今年で14冊目となりますね。

加藤さん:物語コーポレーションは「Smile & Sexy」という経営理念を掲げ、一人ひとりが豊かで幸せな「自分物語」を歩むことを目指してほしいと思っています。「物語レシピ」には、その理念の考え方や価値観がまとめられていて、正々堂々と自分らしく人生を歩むためのヒントがたくさん詰まっています。

編集部:加藤さんは、「物語レシピ」にどんな想いを込めているのでしょうか?

加藤さん:迷ったときや立ち止まったとき、成功体験や失敗体験を積めたとき、あるいは新たなチャレンジをするときなど、自分物語を歩むうえでさまざまな出来事や転機があると思います。そういうときに自分の考え方や行動を振り返るとともに、一歩踏み出す勇気をくれるものとして、活用してほしい。この「物語レシピ」を常に手元に持ち、“自分だけの1冊”として使い倒してほしいですね。

なぜ物語コーポレーションは経営理念を掲げるのか

編集部:当社が理念を大切にしているのはなぜでしょうか?

加藤さん:業態を開発するのも、お店を運営するのも、お客様を喜ばせるのも、改善提案をするのも、すべて「人」がいないと始まりません。人の成長の源泉となるのが「Smile & Sexy」という自己実現を目指す経営理念です。「Sexy」とは、人がどう思うかばかりを気にして自分らしさに蓋をするのではなく、自分はどう思うのかで意思決定し、自己表現を恐れないで生きる“美しさ”のこと。一方で、そうあるために、それを表現してもまわりから愛されたり応援されたりするような、“笑顔”に象徴される人間力のことを「Smile」と呼んでいます。「Smile」と「Sexy」の両面を磨いていくことが、自分らしくイキイキとした魅力的な「個」への第一歩になるのです。

そして、「Smile & Sexy」な生き方をさらに加速させるためには、自分自身のプロフェッショナル性を高めることがとても重要です。意見を言いたいと思っても、プロフェッショナル性が低いと、言いたいことが出てこないんですよね。繁盛店やほかのチェーン店に行ってさまざまなサービスや商品を体験すること、目の前の一つひとつに「なぜこうなっているんだろう?」と疑問を持ち、それについて調べて知識を増やすこと、そして「自分だったらどうするか」を考え尽くすこと。そうすることで、だんだんと自分の考えがつくられていきます。そして日々の行動習慣として積み重ねることで、初めて「自分はこうしたい!」と言いたいことがあふれ出てくるわけです。

編集部:意見を言える自分づくりの第一歩は、行動習慣への落とし込みが重要ということですね。

加藤さん:「Smile & Sexy」に生きる人、すなわち自分の思ったことや感じたことを正々堂々と表現する人は、相手から「それいいね!」や「いや、自分はこう思うよ」など、いろんな反応をもらえます。そこで「こういう視点が足りていなかったな」とか「自分の感覚はちょっとズレていたな」と気付くことで視点が増えたり、論理的思考力や感性・感覚がさらに磨かれていったりします。そうすると、自分の意思決定の精度がどんどん上がっていく。それが「個の覚醒」につながっていくんですよね。

編集部:そうした成長の実感が、人生をますます充実させてくれそうです。

加藤さん:そうですね。「Smile & Sexy」に生き、自分物語が出来上がっていく充実感が、ただの笑顔と元気を「とびっきりの笑顔と心からの元気」に昇華させます。この言葉は、創業期からずっと物語に生き続けているものですが、「とびっきり」とか「心から」という言葉に物語の本質的な強さ、つまり付加価値が宿っていると感じます。自分物語を歩む魅力的な人たちが会社にあふれることで、「いつどのお店に行っても笑顔と元気になれる」というブランド価値をつくり上げ、世の中がイキイキするのではないでしょうか。それこそが物語コーポレーションが社会に提供したい価値であり、パーパスなのです。

今年の「物語レシピ」に込めた想い

編集部:「物語レシピ」は毎年デザインが違いますよね。今年の表紙を見て、ワクワクしました。

加藤さん:みなさんに「物語レシピ」をちゃんと手に取ってもらい、自分物語の新しい1年をスタートしてほしいと思っているので、一目見て「変わったな」と感じてもらえるデザインであることが何よりも大事だと考えています。何が正解かは毎年手探りですが、今年はこれまで以上に「個」の多様性を表現し、よりあたたかみを感じさせるようなデザインにしました。

編集部:それだけでなく、内容も変わっていますよね。

加藤さん:経営理念や物語コーポレーションが大切にする価値観、考え方は不変的なものです。だから、全く違う内容にガラッと変えたわけではなく、「Smile & Sexy」を一人ひとりがより深く理解するためにはどう表現するのが良いのかを考えて、修正を加えています。たとえば今年は、「ブレイクスルー」という言葉を用いて、一人ひとりが持つポテンシャルを最大化するだけでなくさらに突き抜けた状態、すなわち「個の覚醒」を目指してほしいという想いを込めました。また、「Smile & Sexy」な生き方を加速させる要素である「プロフェッショナル」についても、一人ひとりの日々の行動の変化につながることを願ってメッセージをまとめました。

編集部:理念の理解がさらに深まりそうです。

加藤さん:一番大切なのは、正々堂々と自分物語を歩むために、経営理念をどれだけ深掘りし、行動レベルにまで落とし込んで、それを体現していくかです。ぜひとも、「物語レシピ」にある一つひとつの言葉を自分の普段の行動と照らし合わせながら、プロフェッショナル性を高める行動習慣をつくっていってほしいですね。理念を「知っている」と「体現できる」とでは、「なりたい自分」に近づくスピードも質もまったく違います。この「物語レシピ」をちゃんと“自分だけの1冊”にして、一人ひとりに豊かで幸せな自分物語を歩んでほしいと思います。

編集部:加藤さん、ありがとうございました!