本大会の目的と背景
今回で第6回目となる「物語甲子園」が開催されましたね。そもそも、これはどういった大会なんでしょうか?
橋詰梢
国内の全直営・FC店計781店舗が参加し、事業部横断でお客様満足度を競い合う店舗対抗コンテストです。前身は2004年から続く個人対抗戦の「ホスピタリティパートナーズコンテスト」で、新型コロナウイルス感染症の発生による一時休止を経て、2023年8月に店舗対抗コンテスト「物語甲子園」として生まれ変わりました。本大会は単なるランキング争いではなく、営業コンセプトの「とびっきりの笑顔と心からの元気」を体現し、営業力をさらに磨く戦略的な挑戦の場です。
「個人対抗」から「店舗対抗」へと大きく舵を切った背景を教えてください。
橋詰梢
かつての個人対抗戦は、接客や調理のスキルを競い合い、個にスポットライトを当てることで「スターを誕生させる」という目的がありました。しかし、大きな課題として、効果の可視化がしづらく、それが店舗全体の営業力にどうつながったか、お客様にどのくらい喜んでいただけたかなどを測ることが難しかったんです。さらに、個人対抗戦は全国の店舗から代表者を1カ所に集めて開催していたので、遠隔地の方は移動だけでも丸1日かかったり、ご家庭の事情等で参加が叶わなかったりしたこともありました。そこで、大会の仕組みをゼロから再設計し、全員が当事者になれる大会として生まれ変わったんです。
具体的に、何が変わったんですか?
橋詰梢
まず、審査の基準に「NPS®」(ネット・プロモーター・スコア)※という指標が採用されました。これは、顧客アンケート調査をもとに算出されるいわゆる「お客様満足度」のようなもので、どれだけお客様に喜んでいただけたかがダイレクトに数字に表れます。この指標を使うことで、店舗全体の営業力がどう向上したのかなど「効果の可視化」ができるようになり、また日々の営業で回収したアンケートを使用するため、誰もが参加できる形となりました。
※:「企業やブランドに対してどれくらいの愛着や信頼があるか」を顧客アンケート調査をもとに数値化した顧客ロイヤルティ指標
店舗対抗であれば、売上や利益で競い合うこともできると思いますが、あえて「NPS®」を審査基準に選んだ理由を教えてください。
橋詰梢
売上や利益の額で競うと、立地や商圏の影響が大きく、最初から有利不利が決まってしまいます。でも、目の前のお客様を笑顔にするための工夫やその成果であれば、どんな環境でも自分たちの努力で日本一を目指せます。お客様満足度の向上のために、日々の営業で「小さな改善の積み重ね」をしていくことが、結果として他社との「大きな差別化」を生むという成功体験を全店舗に積んでもらう、というねらいがありました。
責任者の決意と「原点」への想い
「物語甲子園」では、毎回ルールを細かく変えていますよね。ここにはどんな意思決定があるのでしょうか。
橋詰梢
一番恐れているのは大会の形骸化です。「自分たちの店舗はNPS®の数値が低いから、どうせ勝てない」と諦めてしまった瞬間に、この大会の意義は失われます。だからこそ、業態ごとの難易度を考慮した「偏差値化」や、最後まで逆転を狙える「リーグ入れ替え制」を導入するなど、これまでにさまざまなルール変更をしてきました。すべては、新人のパートナー(アルバイト)からベテラン店長まで、全員を当事者にするための意思決定です。
そこまで「全員の当事者意識」にこだわる理由は、橋詰さんの店長時代の経験にあるとお聞きしました。
橋詰梢
はい。「物語甲子園」が開催された初期、私は『お好み焼本舗』で店長として働いていました。当時は、売上の獲得や人員不足の対応に追われて、正直このコンテストにあまり本気になれていませんでした。そんなとき、スタッフルームに貼り出されていた「物語甲子園」の告知ポスターを見て、新人パートナーが「これ何ですか?勝つためには何をすればいいんですか?」と聞いてくれたんです。大会の説明をしたら「じゃあ、お客様に喜んでもらうために動けばいいんですね!」と言われて、ハッとしました。それまで、日々の営業に必死になっていたけれど、私たちの使命はお客様に喜んでいただくことだと原点に立ち返ることができたんです。「物語甲子園」は、勝つことだけがゴールではありません。この大会を通じて、全員が当事者としてお客様に喜んでいただくためにどうするかを考えてほしいと思ったんです。
今回の運営で、最も力を入れたことは何ですか?
橋詰梢
私は今回初めて「物語甲子園」の運営責任者を担ったのですが、大会の仕組みを変えること以上に「全社を本気にさせること」に時間をかけました。先ほど触れたとおり「自分の店舗には関係ない」と思われないよう、全員を当事者にしたかったので、事業部長やエリアマネジャーを巻き込んでいくことから始めたんです。巻き込むためには、まず直接私の想いを共有するところからだと考えて、事業部むけに今回の大会の設計やビジョンなどをプレゼンする場を設けました。また、私ひとりだけの力ではアイデアを出すのも実行するのも限界があるため、プロジェクトメンバーに役割分担を行い、アンケート集計の実務やオンライン開会式と閉会式の企画を担ってもらいました。
自分ひとりだけでなく、まわりを巻き込むことで当事者を増やしていったんですね。
橋詰梢
はい。現場に当事者意識をもってもらうにはどうするかをみんなで考えて、オンライン開会式では、事業部長の言葉で店舗を鼓舞してもらうコンテンツをつくりました。事業部長の言葉に勇気づけられた多くの店舗が、社内のWeb掲示板で本大会の店舗目標を発信し、全社一体の盛り上がりを生み出すことができました。私ひとりの力ではここまで想いを波及させることは難しかったと思います。
責任者の覚醒と大会の概要・結果
橋詰さんご自身は、このプロジェクトを通して得られたものはありましたか?
橋詰梢
そうですね。今回の経験を通じて、部署を超えてまわりを巻き込み、物事を推進していく力が身につきました。最初はこんな大きなプロジェクトのリーダーなんてできないと思っていましたが、成長のために矢面に立つ機会を与えられているんだと考え方を変えたことで、リーダーとしての覚悟がきまりました。「橋詰さんがやりたいようにやっていいんだよ」と上司が全面的に信頼して任せてくれたことも大きかったですね。
橋詰さんが設計された今回の「物語甲子園」はどんな大会になったのでしょうか?
橋詰梢
従業員のみなさんが、自店舗の変化や成長を実感できる大会になったと思います。今回は、焼肉事業部、丸源事業部など5つの事業部ごとにリーグ戦を3回行い、上位11店舗が最終決戦に進み、最も高いNPS®を獲得した店舗が総合優勝という形式にしました。それによって、事業部内での自分の店舗の順位がわかりやすくなり、次は何位を狙うぞ!といった目標が立てやすくなったことが大きな収穫でした。
3月17日(火)には表彰式が開催されていましたね。気になる結果を教えてください。
橋詰梢
総合優勝は、FC加盟企業の株式会社本久が運営する『焼肉きんぐ 三郷店』が勝ち取りました!総合優勝から4位までの店舗にはそれぞれ店舗賞金と個人賞金が贈られ、最終決戦に進出した5位から11位までの店舗には店舗賞金が贈られました。さらに、リーグ戦の結果にかかわらず、全店舗が最後まで完走できる仕組みとして「事業部賞」「ブロック賞」「エリア賞」も設けました。大会期間中のNPS®合計点で競った結果、なんと今回は3つの賞すべてをゆず庵事業部が独占するという快挙となりました!現場からは「勝ち負け以上に、店舗全体でお客様をより意識した行動をするようになって嬉しい」や「パートナーの自主性が上がり、店舗の雰囲気が良くなった」などの感想をもらえました。狙いどおりの成果に結びついたことが、運営として一番嬉しかったですね!
「物語甲子園」の今後の展望を教えてください。
橋詰梢
この大会を「年に2回のイベント」で終わらせたくありません。「どうすればお客様にもっと喜んでいただけるか」を考える力や行動力を、大会の期間だけではなく日々の営業にも活かしていきたいと考えています。全国の店舗で個が覚醒し、従業員が輝くことで、お客様の笑顔に連鎖していく。そんな物語コーポレーションの人財力と成長を支えることができる大会として今後も開催していきたいと考えています。
橋詰さん、ありがとうございました!