【肉そば20周年企画②前編】肉そば開発者 堀さん × 商品開発部 丸源担当 飯島さんの対談!
堀さん:「肉そば」を販売し始めてから20周年ってこと?
飯島さん:期間限定で初めて登場したときから起算して、今年が20周年ですね。
堀さん:もうそんなに経つんだねぇ。
『丸源ラーメン』の看板商品「熟成醤油ラーメン 肉そば」の販売から20周年。
現在、店舗では「20周年企画」としてさまざまな取り組みやキャンペーンを実施中です。
今回、「肉そば」の開発者で、現在は物語上海やインドネシアの商品開発に携わる上級執行役員 堀 誠さんと、
現在『丸源ラーメン』の商品開発担当である商品開発部 飯島 真一郎さんによる対談が実現しました!
前編・後編にてお届けします!
意外なきっかけで誕生した「肉そば」
堀さん:もともとは、『源氏総本店 向山店』の向かいに、『上海豚麺』っていう中華の業態があったんだけど、
そこがテストキッチンも兼ねていたんだよ。当時はまかないとして、手軽だからよくラーメンを作っていて、
しばらくして新しいラーメンも試作してみたいと思ったんだ。そしたら、目の前に『源氏総本店』があるじゃない。
「しゃぶ肉」や「紅葉おろし」、「ネギ」もある。そこの食材をもらって創作したのがきっかけ。
僕はもともと和食出身ということもあって、何を作ってもなんとなく「和」っぽくなっちゃうんだよね(笑)
サッと湯通しした豚肉の美味しさを知っていたし、肉を薬味やおろしで食べるラーメンもきっと美味しいだろうと作ったのが、
最初の「肉そば」で、それが試作第1号だった。
▲『釜あげチャーシュー 上海豚麺』。この中華業態によって、物語の業態開発において「ラーメン」という切り口が増えた。
飯島さん:向かいにあったのが『源氏総本店』でなければ、別のラーメンが生まれていたかもしれないですね(笑)
堀さん:そうそう。「肉そば」は生まれてなかっただろうね!
当時、三河安城で開店した『丸源ラーメン』が試行錯誤していた時期で、新しくて面白い商品を作りたかったんだよね。
期間限定メニューも考えなきゃいけなかったし、試作の「肉そば」は店舗のみんなからも「おいしい!」って人気があって。
じゃあ、1回お客様に出してみようかと。けれど、食べておいしいだけの単なる「料理」を、そのまま商品化するわけにはいかない。
きちんとオペレーションに乗せられるか、原価なども考慮してきちんと商売として成り立つかを考えなきゃいけない。
そこで、「まかないメニュー」から見た目や作る工程も変えて、「料理」を「商品」にしていった。それがスタートだね。
飯島さん:もともと料理名も今と違いましたよね。「たっぷり背脂の肉そば」という商品で売っていました。
同時に「直火焼つくねのネギそば」も売っていました。
▲当時の期間限定メニューとして登場した「肉そば」と「ネギそば」。
堀さん:そう。ガッツリ系商品として「肉そば」、あっさり系商品として「ネギそば」をコンビで期間限定商品として売ったんだ。
すると、もともとターゲットでなかった女性客やご年配の方も、意外と「たっぷり背脂の肉そば」を注文したんだよね。
これは結構マーケットが広い商品になるんじゃないかってことで、グランドメニュー化したんだ。
飯島さん:このあたりの「肉そば」の開発プロセスについては、自分も『丸源ラーメン』担当になるにあたって、
堀さんや歴代の開発担当の人たちから、教えてもらいましたよね。やっぱり知らないと開発に携われないので。
たとえば、「なぜ売れているのか」とか「なぜ『肉ラーメン』じゃなくて『肉そば』という商品名にしたのか」とか。
今の『丸源』を終わらせないためにも、堀さんを起点として、みんながそれを言える状態でないといけないと思うんですよね。
「肉そば」の開発については、代々こうやって教わり続けてます。
商品名のこだわり、見た目のこだわり
堀さん:「肉ラーメン」って結構単純じゃない?(笑)当時のメニューは、「醤油ラーメン」「塩ラーメン」って
「なんとかラーメン」ばかりだったから、名前が埋もれないように、差別化をしたかった。
なんとなく「和」の匂いは残したかったし、親しまれやすいような商品名にしたかったんだよね。
「肉そば」の方が語呂もいいしね。
差別化で言うと「肉そば」の「顔」もそうで、人がおいしいと感じる色彩ってあるんだよ。
「食の五原色」といって、和食の世界では大切にされているもの。刺身や八寸、前菜など、和食の盛り付けでは特に意識されている。
「食の五原色」の食材が入ると、「食べておいしい」じゃなく「食べる前に美味しい」と思わせることができる。
だから、結構重要なんだよね。でも、ラーメンの中で五原色を揃えるのってなかなか難しくて。
▲かつて展開していた『丸源ラーメン』のメニュー。
飯島さん:お客様が一番最初に見るのはメニューだから、そのメニューを見て「おいしそう」と思えるかって大事ですよね。
見た目がわけの分からない商品だったら注文されない。堀さんが伝えてきた商品の「顔」の大切さが染みついています。
期間限定メニューでも、「これがうまそう!」と思ってポンと提案しても、それがそのまま商品になることはまずなくて。
商品名も、なぜその名前なのか?なぜカタカナにしたのか、ひらがなじゃダメなのか?まで考えなきゃいけない。
お客様の注文する一品が勝負となる業態なので、思い切ったことをするのはなかなか難しいこともあります。
「変わり映えのしないラーメンを提案するな!」と怒られることもありましたね(笑)
堀さん:物語コーポレーションの業態は、色々なものを注文して食事を満たすという商売がずっと続いていたけれど、
『丸源ラーメン』のような、丼一杯で「良い・悪い」が決まる世界って、自分にとっても初めての経験だった。
やっぱり、どう「おいしい」をつくるかが重要なんだけど、「おいしい」って、実はみんな食べる前にすでに決めていて。
食べた後で、自分の想像した「おいしい」と味覚で感じる「おいしい」が合うかどうかが、次のステップになる。
だから、食べる前にこそ「おいしい」と思わせることが重要で、飯島さんの言う通り「どう商品の『顔』を作るか」は
いつも商品開発部においては最も重要なキーワード。売れるか売れないかが、それで8割決まるんだよね。
▲「肉そば」には「食の五原色」がそろっている。(赤=もみじおろし、黒=焼海苔、白=丼、黄=麺・スープ、緑=ネギ)
職人のつくる「肉そば」から、みんながつくる「肉そば」へ
堀さん:味覚で感じる「おいしい」についてだけど、ラーメンは、スープの良し悪しで決まるんだよ。
日によって、あるいは作る人によってブレることがある。
開発しながら、安定させるためには、「スープに頼らないスープづくり」をすることが重要だと分かった。
だから、旨味をつくるのは「かえし」で、スープの役割は香りをきちんとつくるという方向で開発をしたんだ。
実は、『丸源』のかえしは、他社に比べてすごく複雑な要素で出来上がっているんだよ。
その分、乳化だけはきっちり店舗でやることにした。
だから、火力がどれくらいでないとダメ、何分沸騰させないとダメとか、
そこだけは手作業で見た目で判断しながら調理する部分も入れた。
「かえし」の役割、「スープ」の役割、「調理」の役割をきれいに分散して、
「安定したスープ」という1つの完成をつくるっていう設計にしたんだよね。
とはいえ、最初はやっぱり思ったようにきれいにはできなくて、大変だったんだけどね(笑)
何年もやりながら、完成形に近づけていった感じかな。
後編では、「熟成醤油ラーメン 肉そば」の開発の歴史や、今後の可能性についての対談をお届けします!
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