『焼きたてのかるび』の誕生の背景を教えてください
『焼きたてのかるび』1号店のオープンから約5年、現在は全国に37店舗展開していますね。
笠原浩揮
おかげさまで、順調に成長しています。『焼きたてのかるび』は、物語コーポレーション初のファストカジュアル業態として、本格的な焼肉をリーズナブルな価格で提供することをコンセプトとして誕生しました。看板商品は、ご注文が入ってからお肉を強火で一気に焼き上げる「名物 焼きたてのカルビ丼」です。「なぜ焼肉丼なの?」とよく聞かれるのですが、実はちゃんと理由があるのです。
私もそこが気になっていました。ぜひ教えてください!
笠原浩揮
焼肉丼というマーケットに、潜在的な可能性が広がっていると考えたからです。一般的に、焼肉屋の来店頻度は3カ月に1回といわれています。少なくとも一人3,000~4,000円ほどかかるので、月に何度もいくことはなかなか難しいですよね。一方で、牛丼チェーンではカルビ丼が一定の割合で売れているそうなんです。牛丼の1.5倍くらいの値段にもかかわらず売れるということは、ここに「もっと日常的に手ごろな価格で美味しい焼肉を食べたい」という潜在的なニーズがあるのではと考えました。そこで、私たちが専門店品質のお肉を使った本格的な焼肉丼を圧倒的な低価格で提供し、その潜在マーケットを切りひらくことで、焼肉市場に新たな価値を生み出せると確信したのです。
可能性がある潜在マーケットで新たな挑戦をしようと考えたのですね。
笠原浩揮
そうです。本格的な焼肉を低価格で楽しんでいただくうえで、目を付けたのがファストカジュアル業態でした。これは、カウンターサービスが基本のファストフードと、質の高い商品を提供するファミリーレストランの中間にある業態です。『焼きたてのかるび』ではホールスタッフがおらず、券売機でご注文いただき、それを受けて一つひとつ丁寧に調理した商品をカウンターからお渡ししています。フルセルフオーダーで効率化・省人化を実現することで、低価格での提供が可能となっています。ファミリーレストランの質の高さに象徴される「専門性」とファストフードの早さや手軽さに象徴される「利便性」を両立していることが『焼きたてのかるび』の最大の価値なんです。
専門性×利便性の価値とは何ですか?
なるほど!おもしろいですね。専門性と利便性、それぞれについて詳しく教えてください。
笠原浩揮
まず、専門性については、焼肉屋としての本質的な価値にこだわるということです。「焼肉体験を一杯の丼に」というテーマで、メニューは客単価3,000~4,000円の焼肉屋と同等の熟成肉を強火で一気に焼き上げて提供するカルビ丼を中心に展開しています。開店当初は、1杯ワンコイン以内で提供していることも他社との差別化要素の1つでした。いまは社会情勢などによって価格改定をしましたが、それでも他社と比較して圧倒的なリーズナブルさを維持しています。また、カルビ丼とセットでお楽しみいただけるもう1つの名物として、厳選した牛肉の旨味が特徴の「ユッケジャンスープ」をラインアップしています。
期間限定メニューも定期的に更新されていますよね。これもコンセプトは同じなんでしょうか?
笠原浩揮
おっしゃるとおりです。これまで「牛すき焼きカルビ丼」や「王道カルビラーメン」など、焼肉と親和性の高いメニューや焼肉屋で注文したくなる商品を販売しています。最初は『焼肉きんぐ』と同じように年4回、期間限定メニューを変更していましたが、いまは年10回に増やしています。というのも、『焼きたてのかるび』のお客様は約1カ月に1回という頻度でご来店される方が多く、お店に行ったらいつも新しいメニューがあるという目替わり感と楽しみを提供したいと考えたからです。また、今年3月にはグランドメニューをリニューアルし、新メニューの追加や肉質の向上などに取り組みました。
「専門性」の高さがメニューに表れていることがよくわかりました。一方の「利便性」についても教えてください。
笠原浩揮
『焼きたてのかるび』では多利用動機の獲得を重視しています。低単価の業態だからこそ、さまざまな場面やシーンでご利用いただくことが大事で、そのために必要なのが販路の拡大だと考えました。そこで、イートインだけでなくテークアウトにも力を入れ、モバイルオーダーや出前館、Uber Eatsなどのデリバリーのほか、物語コーポレーションにおいて初めてのドライブスルーも導入しています。こうして利便性を高めることによって、仕事終わりの夕飯にデリバリーをご注文いただいたり、スポーツクラブのお弁当として大型予約をいただくなど幅広いニーズをつかむことができ、現在イートイン以外の売上は全体の約50%を占めています。
ファストカジュアル業態では、お客様との接点が少ないイメージなのですが、営業コンセプトの「とびっきりの笑顔と心からの元気」はどう表現していますか?
笠原浩揮
接点が限られているからこそ、ポイントを3つにしぼって教育を徹底しています。ひとつはお客様がご来店されたとき、次に商品の受け渡しのとき、最後にお客様がお帰りのときです。明るく元気な声で「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」を伝えることはもちろん、カウンターでの商品提供時に紙エプロンをご案内する、一人で運び切れないときはお手伝いを申し出るなど、「フルセルフなのにここまでやってくれるんだ」とお客様に感じてもらえるよう、「おせっかい」の体現にこだわっています。
これからの出店や展望について知りたいです
今後の出店についてお聞きしたいです。
笠原浩揮
今後は、関東でドミナント出店を加速させつつ、新しいエリアの開拓もしていきたいと考えています。2021年に初めてオープンしてから、関東や中部の郊外ロードサイドを中心に展開を進めてきましたが、人口の多い関東にはまだまだ出店の余地があると感じていて、駅ナカや駅前の立地も検討しているところです。また、大阪や仙台といった新エリアでの可能性を探っているところですね。
『焼きたてのかるび』の今後の展望を教えてください。
笠原浩揮
「焼肉体験を一杯の丼に」という業態の軸は今後も変わりません。そのうえで、焼肉のファストカジュアル業態においてナンバーワンとなるべく、まずは100店舗体制を目指します。そのために、新規出店や業態のさらなる改善を進めていきますが、同時にそれを支える「人財力」を育てていくことも重要です。「とびっきりの笑顔と心からの元気」と焼肉屋の本質的な価値をきちんとお客様に届けられる人財を育成することで、どれだけ店舗数が多くなっても、お客様がいつでも笑顔と元気になれるブランドを実現していきます。
笠原さん、ありがとうございました!